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長谷川賢:「francer」

フランス全般に関する旅行情報や各地方や町の楽しみ方など、特に「地方色の豊かさ」をテーマに村めぐり、ワイン、地方文化などをテーマに綴ります。





第40回:ノール・パ・ド・カレー地方とランスのルーブル美術館別館

7月には北フランスへ出かけました。緑が美しく爽やかな季節であり、訪ねたシャンパーニュ地方のランス(Reims)、ロレーヌ地方のナンシーなどは街も活気があり、まさに好適シーズンと言える時期でした。

そんな中、初めて訪ねたのが、ノール・パ・ド・カレー地方。北フランスの大都市リールに2泊することになりました。ノール・パ・ド・カレーと言ってもあまり具体的なイメージがしにくく、リールという大都市があるくらいのイメージしか持ち合わせていませんでした。リールの街そのものも、街の規模は大きいものの北部工業地帯の中心都市であり、ベルギーに近いこともあり、フランドル風の町並みが残っているという程度にしか思っていませんでした。それでもリールの街を中心にした一帯は、ユネスコの世界遺産に登録されており、リール旧市街中心のドゴール将軍広場の家並みはなかなか壮観ではありました。

さて、そんな中、通常訪ねることが稀なノール・パ・ド・カレー地方に足を伸ばした理由は、2012年12月にオープンしたランスのルーブル美術館別館の訪問です。ランスと言っても、前述したシャンパーニュ地方のランス(Reims)ではなく、ランス(Lens)と書く町。カタカナで書くとどちらも「ランス」になりますが、こちらはどちらかというと「ロンス」に近い発音となります。

ランス(Lens)の街はノール・パ・ド・カレー地方の町らしく工業都市として発展した町で、炭鉱の町として発展してきました。しかし、現在ではこれと言った産業がなく、今回のルーブル美術館別館が観光施策として町の発展を後押しする起爆剤となってくれることを期待している町です。

観光施策として大きな美術館の別館を作ることは他の美術館ですでに行われている施策であり、中でもアメリカのグッゲンハイム美術館がよく知られています。スペインのビルバオにあるグッゲンハイム美術館を訪ねたことがあるのですが、ここでは町の観光地化を大きく牽引し、成功をおさめた良例といえるでしょう。

今回のランス・ルーブル美術館別館にもそのようになってほしいという願いがあります。ちなみにフランス国内において、このノール・パ・ド・カレー地方にルーブル別館を建てることになったのは、行政・経済的にも基盤がしっかりしており、安定していることが挙げられます。また、その中でランスが選ばれたのは、周辺からのアクセスの良さが挙げられます。首都のパリからもTGVを使えば1時間程度でアクセスすることができ、車でも高速の出口を降りて、ほどなくして美術館に辿りつきます。リールからは言うまでもなく、フランスの周辺地域、パリまたは隣国のベルギー、そして英仏海峡を越えたイギリスからのアクセスも悪くないと言えます。

フランスでは新しい建物を建てる時、伝統的に行われてきたのは、コンペティションであり、このランス・ルーブル美術館別館もその例にもれず、建物のデザインには多数のデザイン案が募りました。

その中で、ランス・ルーブル美術館の設計担当に選ばれたのはSANAAという日本人建築家ユニットによるもので、元宮殿であったルーブル美術館とは全く異なるシンプルな設計となっています。

ガラスを多用し、光を取り入れた設計で、とにかく明るい内部が印象的です。いくつかの部屋に分かれている構造ではなく、1つの大きな空間の中に、いくつもの施設(受付、ショップ、インフォメーション、カフェなど)が入っています。

(ガラスを多用した美術館のパブリックスペース)




(美術館、館内)

展示や作品に関しても興味深いところが多くあります。まずはルーブル美術館別館という名の通り、展示作品はすべてルーブル美術館の作品であること。そのうちのいくつかを別館に持ってきて展示をしています。

2012年のオープン時に、古代メソポタミアやエジプト、ローマ時代、中世、ルネッサンス、近代と様々な時代の作品がランス・ルーブル美術館にもってこられました。

世界的に見て、有名な作品こそ少ないですが、ボッティチェリやラファエロ、ルーベンスと名高い画科の作品も多く、中でも開館に際しての目玉作品としてドラクロワの「民衆を導く自由」が貸し出されました。今後は一年ごとに1/5ずつ新しい作品と取りかえられ5年で中身ががらりと入れ替わることとなります。

また展示されている作品のレベルはどれも非常に高いものです。元々ルーブル美術館の作品なので当然といえば当然なのですが、正直なところルーブル美術館では時間的な制約と膨大な数のコレクションを見ていくので、これらの作品をじっくりと鑑賞する余裕はまずありません。また、以上に多い観光客を押し分けての鑑賞となるので、落ち着いて絵を見ることもままならないのが現状でしょう。それが、このランス・ルーブル美術館では可能となったわけです。展示スペースは余計な装飾もなく、作品との距離も近いので、落ち着いた環境の中でルーブル美術館の作品を鑑賞できるというのも大きなメリットの1つと言えるでしょう。

最後に展示の仕方を取り上げたいと思います。ランス・ルーブル美術館の常設展は、la Galerie du temps(時のギャラリー)と名付けられています。

このスペース長さ120m、横幅25m、高さ6mという大きな空間となっており、この空間内に全ての作品が展示されています。「時のギャラリー」の名の通り、手前から奥に進むにつれて、時間が経過するという造りになっています。

つまり最初はメソポタミアやエジプト時代の作品から始まり、古代ローマ、中世、ルネッサンス期と続いていきます。そして一番奥にドラクロワが配されているという造りになっています。時代による作品の変遷を見ていくことができるのです。

(一番奥に、ドラクロワの作品が見える)






また、ある時期からは向かって左側にキリスト教がベースとなった作品、右側には非キリスト教がベースの芸術(イスラミック・アートなど)が展示されています。

横で見れば同一時代のものだとわかるので、同時代の作品が地域によって、どのくらい異なるのかを見ることができるというのも興味深いところです。

新しいルーブル美術館の試みはまだ始まったばかり。私が訪ねた時にはルーベンスの展覧会が開かれていましたが、色々な試み、作品の種類や展示方法などを行い新しいルーブルの楽しみ方はこれからもっと増えていくような予感を感じさせてくれる美術館でした。

(ルーベンス展にもすばらしい作品が目白押しでした。)




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